「カウンセリング」と聞くと、何か特別なことのように感じて、扉を叩くのをためらってしまう方もいらっしゃるかもしれません。

なにか敷居が高いように感じられ、心の問題を抱えた抵抗感や負のイメージをお持ちの方も多くおられますが、
いざ入ってみると30-60代の働く世代の方を中心に気軽にご来室されています。

当ルームは、あなたのお話をしっかりと、丁寧にお聴きします。
その上で明日からの日常を再びご自身の足で歩んでいくための「道具」を、わたしと一緒に作り上げていく場所。
それが「カウンセリングルームみやまかわ」です。
その道具は、例えばランニングシューズでしょうか。
あるいはママチャリだったり、バイクだったり、もしかしたらスポーツカーに見えるかもしれません。

そうは言いましても、その正解は人それぞれです。
わたし自身70年の人生の中で、医療や介護福祉、製造現場のメンタルヘルスを支える実務といった気の緩みが許されない厳しい環境に身を置いてました。
だからこそ、現場の重圧を肌で知る一人の産業カウンセラーとして、きれいごとや理屈では上手くいかないなという経験が身にしてみてます。
その蓄積でしょうか。明日からすぐに役立つ実戦的な対話とツールを何よりも大切にしています。

これからご紹介するお話は、人間関係に深く悩んでいたある社員Aさんの事例です。
当ルームの面接を通じて、どのような変化が起きたのかをお示しします。

職場の方はとても親切でしたが、Aさんはどうしても自分から話しかけることができませんでした。
いざ話しかけようとすると、緊張のあまり身が縮まり、顔はうつむき、手足がこわばって震えてしまう、ついには、よく眠れないなど身体に影響が出始めました。
数度の面接を経て、Aさんはようやく涙を流し声を震わせながら、

「・・・どうやって話しかけたらいいか、わからないんです」

わたしはタイミングを見計らい、こう質問しました。
「では、最初に話しかける言葉がわかれば、うまくいきそうですか?」
その瞬間、Aさんは顔を上げ、わたしの視線にしっかりと合わせて、「そうなんです」と力強く答えました。
明らかに表情や態度が変化しています。

これが、Aさんにとっての「悩みごとの核心(焦点化)」でした。
わたしはアドバイスとして、話しかける時、最初に「確認ですが、」という一言を置くように伝えました。
そして、その場で空の椅子を相手に見立て、何度か言葉に出す練習を繰り返しました。
最初はか細い声でしたが、しだいにAさんなりの言葉の出し方になっていきました。
Aさんは、その小さな、けれど確かな手応えを手にして職場へ戻っていきました。

《1ヶ月後》

Aさんは見違えるような笑顔で報告に来てくれました。
「(確認ですが)と言い始めたら、びっくりするくらいうまくいくようになりました。最近では、その言葉を使わなくても自然に話しかけるようになりました。ときどき、忘れてしまうこともあります」
晴れやかな顔で、こう付け加えました。

「なあんだ、わからないことは聞けばいいんだって、やっとわかりました」

この「なあんだ」という言葉。単なるテクニックを超えて、物事の本質が、「あ、わかった、わかったってこういうことなんだ」と腑に落ちた瞬間であり、Aさんの中に眠っていた「変化の種」が芽吹いた瞬間でした。
それ以来、Aさんが悩んで来室することはありませんでした。

わたしのカウンセリングでは、心理学の理論を理解することに重きをおくよりも、明日からの日常という現場で、あなたが実際にどう振る舞いどういう言葉を使うかが重要と考えてます。
カウンセリングでは主に以下の手法と順序を用いて、あなたに合わせた面接の手順を組み立てていきます。

  • あなたがお話をするペースやスピードに合わせて、時に近づき時に離れながら、程よい距離でお話をお聴きします。
  • 「今、お話しながら手が震えていますね」「本当は、こうしたかったんですね」といった、起きている事実を一つずつ確認していきます。あなたが、「はい」と答えていくプロセスを大切にします。
  • 強いストレスがある時に、心身に不調が起こるのは人間としてごく自然な反応です。「この状況なら誰だってこうなるのは当たり前のことです」と事実を一般化します。
  • 感情を無理に抑え込まず、涙はそのままに流していただきます。涙を流すことは、空っぽになった心に再びエネルギーを溜めていくための大切な浄化作用です。
  • 漠然とした「重苦しさ」の中から、本当の困りごとは何なのかを特定します。「何ににっちもさっちもいかなくなっているのか」を丁寧に紐解き、今一番解決すべき「核心」を、「あ、これだ!これが問題なんだ!」
    と、浮き彫りにします。
  • 眼の前に空の椅子をおき、伝えたい相手がそこに座っていると仮定して、実際に声を出す練習をします。「椅子を使った対話の練習」を通して身体で学んで頂き、現場に戻った時に自然に言葉を発する可能性が高くなります。

長年の面接経験のなかで、この面接の手法にたどり着きました。

Aさんの事例のように、具体的な一言や小さな工夫が、その後の景色を大きく変えるきっかけになることがあります。
面接を通じて、ご自身や周囲の状況を、真正面からみて、整理して、小さな気づきを得ることから、また再び始まることになります。

当ルームに来室される方は、それぞれ置かれている環境は異なりますが、誰かのために、あるいは社会のために一生懸命に貢献したいお気持ちが強く、それゆえに悩みや困りごとは、その現れともいえます。
わたしは、その悩みが、あなたが成熟し、自分らしく生きていくための貴重な「変化の種」であり、人生を見つめ直すための絶好の「機会」となりうると考えています。

「わたしはただ、伝え方を知らなかっただけなんだ」
「状況の全部が悪いわけではない」
「ついつい相手の顔色をみてしまうのが、今の苦しさの正体だったんだ」

もし、どうしても解決できないほど疲れ果てているのであれば、それを思い切って「手放す」という選択肢もあります。無理にすべてを抱え続けることだけが正解とは思えません。

明日という日が、今日よりは少しだけ、息が楽にできる、身体が楽に感じることになりますように。

わたしは、扉をあけて、あなたをお待ちしております。

鹿児島県曽於市出身。
1956年5月生まれ。70歳。
1978年…看護師免許取得。神奈川県内の大学病院で看護師として勤務。
1983年…子育てを機に現在の松田町に転居。
2000年…介護支援専門員取得。小田原市の介護サービス施設にて訪問、施設看護、包括支援相談員を担当。
2012年…神奈川県内有数の精密機器上場企業(社員数3500名)に転職し、従業員の健康管理やカウンセリング業務に従事。産業カウンセラー取得。
※上記担当事業所の規模人数:700人
2025年…定年退職後、カウンセリングルームみやまかわを開業。
2026年…2月、松田町町内のNPO法人アシガラパートナーズsuprapoに事務所を移転。